Salesforceは本当に使いにくい?

「Salesforce 使いにくい」と検索する方は、導入企業の規模を問わず数多く存在します。世界的に高いシェアを誇るCRMでありながら、現場からは「入力が大変」「画面が分かりにくい」「結局Excelに戻ってしまう」という声も上がってきます。

本記事では、Salesforceが使いにくいと言われる具体的な指摘を整理し、その原因を分解します。さらに、Salesforceならではのメリットや向いているユーザー像、使いにくさを感じたときの実践的な対処法まで、順を追って解説していきます。

Salesforceが「使いにくい」と言われる具体的なポイント

Salesforceに対する不満を調べると、単なる「好き嫌い」ではなく、業務に直結する具体的なつまずきが見えてきます。技術系コミュニティや実務者の体験談、海外フォーラムなどを横断的に整理すると、不満は大きく9つの領域に集中していました。

画面が直感的でなく、検索も使いづらい

最も頻繁に指摘されるのが、UI(ユーザーインターフェース)に関する不満です。「検索機能が正直使いにくいです。指定した複数のフィールド検索できない」という実務者の声に代表されるように、業務で必要な横断検索が標準機能だけでは難しいケースがあります。

また、「情報量が多すぎる…一番直感的じゃない」「標準機能だと詳細画面も無駄に間隔が広くて…情報量が少ない」といった、画面密度や操作感に対する不満も繰り返し見られます。多機能であるがゆえに、画面上の選択肢が多くなりすぎ、操作ストレスにつながりやすい構造があるのです。

動作が遅い・不安定に感じる

パフォーマンス面の不満も根強く存在します。「レポート結果でなく画面が真っ白」になりリロードすると確認位置が分からなくなる、Experience Cloud(旧Community)全体が遅いといった報告が見られます。

注目すべきは、Salesforce自身もLightning Experienceの性能改善をロードマップの課題として扱っている点です。つまり「遅い・重い」という体感は個社だけの問題ではなく、プロダクト全体の改善テーマになっていることが公式に示されています

自動化やカスタマイズの管理が難しい

Salesforceは柔軟なカスタマイズが可能ですが、その自由度が長期運用で裏目に出ることがあります。「プロセスビルダーの管理画面は…まだまだ使いづらい」「探し当てる手間」がかかるという声や、変更セットの設計が古く使いにくいという指摘が技術者から上がっています。

さらに、Salesforce組織のカスタマイズを300件分類して技術的負債を分析した研究もあり、「作り込み」が運用負債として蓄積しやすいことは、構造的な問題として認識されています

権限設計が複雑すぎる

「プロファイル数、44個。権限項目数、285種類。心が折れかけます」——この実務者の嘆きは、Salesforceの権限管理の複雑さを端的に表しています。少し権限が違うだけでプロファイルが乱立し、メンテナンスが困難になるという構造問題も指摘されています。

公式ドキュメントでも、共有モデルは「複雑な関係」として説明されています。OWD(組織全体のデフォルト設定)、ロール階層、権限セット、共有ルールなど複数の要素が積み重なる設計であり、「慣れるまでの難所」になりやすい領域です。

標準レポートに限界がある

レポート機能に対する不満も見逃せません。レポート資産の利用状況を可視化したりタグ付けしたりする機能が弱く、「結局ExcelやConfluenceで管理している」という声があります。また、標準レポートには2,000行の制限やクエリの複雑性による制約があり、外部オブジェクトなどを使う場面で顕在化しやすいのが実情です。

さらに深刻なのは、「最初から登録項目を多く作りすぎている…業務負荷」という指摘に見られるように、入力設計のミスがレポートの精度を下げ、結果として「使っても意味がない」という悪循環を生むことです。

その他の代表的な不満

上記以外にも、以下のような指摘が繰り返し観測されています。

Salesforceは本当に「使いずらい」のか?

ネガティブな声を集めると問題だらけに見えますが、全体像はもう少しバランスが取れています。

不満の多くは「製品の欠陥」だけでは説明できない

不満を分類してみると、公式に「制限・設計」として明文化されている領域(マルチテナントゆえのガバナ制限、2,000行制約、共有モデルの複雑性など)と、設定・教育・運用設計で改善できる領域(項目過多、画面最適化不足、入力価値の説明不足など)が混在しています。

つまり、Salesforceの「使いにくさ」は単一原因ではなく、製品設計上のトレードオフ(強みの裏返し)、導入・運用設計の失敗(組織要因)、熟練度のギャップ(教育不足)が相互に増幅して起きるものです。Salesforceの強みである高機能・柔軟性・統合性が、ガバナンス不在の組織では「複雑性」として現れやすい——この構造を理解することが、改善の第一歩になります。

「入力→定着→分析」の連鎖が鍵

複数のソースで繰り返し語られているのが、「入力負荷が高い→誰も入力しない→データが不完全→レポートが当たらない→Excelに逆戻り」という負の連鎖です。この連鎖はUIの好み以上に、運用設計の品質に左右されます。逆に言えば、ここを押さえれば改善の再現性は高いということでもあります。

「使いにくい」の原因はどこにあるのか

Salesforceの使いにくさの原因は、大きく3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。

原因①:製品設計上のトレードオフ

Salesforceはマルチテナント環境(複数の顧客組織が共有基盤を利用する設計)を採用しています。そのため、リソースの独占を防ぐ目的で、CPU時間やメモリ、SOQL/DML回数(データベースへの問い合わせ・更新の回数)、外部呼び出しなどにガバナ制限(リソース上限)が設けられています。これは「制約」ですが、同時にスケールと安定運用を成立させる根幹でもあるのです。

Lightning Experienceの性能課題、レポートの2,000行制限、APIコール数の上限なども、マルチテナント設計に起因する制約として理解できます。大量データや複雑なレポート、高頻度のAPI連携が必要な場面で「壁」として体感されやすい領域です。

原因②:組織・運用の設計不足

「使いにくい」が深刻化する決定的なパターンは、要件の足し算が無制限に続くことにあります。導入初期に現行業務をそのまま移そうとして項目を増やし、入力の価値が説明されず、データが入らず、レポートも作れず、結果として誰も使わない——この失敗談は典型的なものです。

「上司も見ていない」「入力しても意味がない」といった心理的な障壁も定着を壊します。これは単なる操作説明の問題ではなく、組織としての変革管理の問題として扱うのが適切でしょう。

原因③:教育・トレーニングの不足

「PDFで配布…だけでは…動いてくれません」「一度きり…では…使うのをやめる」——トレーニング設計の不足が定着を阻害する実態は、導入支援側からも繰り返し指摘されています。

Salesforceの「使いにくい」は、まさに「知覚された使いやすさ」が損なわれることで利用が進まず、ツールの価値も実感できなくなる悪循環として説明できます。

Salesforceのメリット:選ばれる理由

使いにくさの指摘がある一方で、SalesforceはCRM市場でリーダー級のシェアを維持し続けています。その理由を、競合との比較も踏まえながら確認しましょう。

世界CRM市場でのリーダーシップ

SalesforceはIDCの調査を根拠に、CRM市場で20%前後のシェアを継続的に維持していることが公表されています。この圧倒的な導入母数は、人材市場の厚さ、知見の蓄積、パートナーネットワークの広がりに直結しています。「困ったときに頼れる人や情報が見つかりやすい」という点は、他のCRMにはない実務上の大きな強みです。

巨大な拡張エコシステム

AppExchange(Salesforceのアプリマーケットプレイス)には9,000を超えるアプリやコンサルティングサービスが掲載されています。標準機能だけでは足りない部分を、市場に存在するソリューションで補える選択肢の広さは、長期運用における安心材料になるでしょう。

学習基盤とロール定義の充実

Salesforceは、管理者・開発者・利用者といった各ロールに応じた学習パスをTrailhead(公式の無料学習プラットフォーム)で提供しています。管理者の中核責務としてユーザー管理・データ・セキュリティ・分析などが明確に定義されており、「CRMの管理者には何が求められるのか」が制度として整備されている点は注目に値します。

統合的な分析プラットフォーム

標準レポートの上に、CRM Analytics(Salesforceネイティブの分析機能)とTableau(全社規模のBIプラットフォーム)を補完関係として位置づけ、用途に応じて使い分ける思想が示されています。分析レイヤーの選択肢が社内に揃っていることは、データ活用を進めるうえで見逃せない利点です。

Salesforceはどんな人・組織に向いているのか

Salesforceの強みと弱みを踏まえたうえで、どのような条件の組織に合いやすいのかを整理します。

Salesforceが合いやすいケース

Salesforceは、営業・サービス・マーケティングなど複数部門を横断した顧客データの統合が求められる中堅〜大企業で、特にその真価を発揮します。厳密な権限管理や監査対応が必要な組織、AppExchangeの豊富なアプリで機能を拡張していきたい組織にもフィットしやすいでしょう。

SMB(中小企業)向けにはStarter Suiteが「使いやすいアプリに統合したシンプルなCRM」として位置づけられており、ガイド付きのオンボーディングで早期に立ち上げる設計がなされています。

想定ロール・規模 Salesforceが得意な点 使いにくさが出やすい条件
SMB(営業中心) Starter/Proの段階設計で導入初日から価値を出しやすい 上位要件を早期に詰め込むと項目過多で破綻しやすい
Enterprise(複数部門) エコシステムと拡張性、統合プラットフォームとしての強み 権限・自動化がスパゲッティ化しやすく、負債が蓄積する
管理者(Admin) ロール定義と学習資源が豊富 権限棚卸し・変更管理など運用の重さが集中する
アナリスト・企画 CRM Analytics+Tableauで分析レイヤーの選択肢がある 標準レポートの限界やデータ品質の影響を受けやすい

使いにくさが出やすいケース

「現行業務をそのまま移したい」という志向が強い組織では、項目が際限なく増え、入力負荷が跳ね上がるリスクがあります。管理者が不在または兼任で手が回らない組織、トレーニングが「一度きりの説明会」で終わってしまう組織でも、定着の失敗が起きやすいでしょう。

また、API制限やレポートの行数制約が業務に影響するケース(大量データの連携や複雑な分析が日常的に必要な場合)では、設計段階から制約を織り込んだアーキテクチャが求められます。

Salesforceが使いにくいと感じたときの対処法

「使いにくい」という声が現場から上がったとき、ツールの乗り換えを検討する前にやるべきことがあります。原因を切り分け、効果の出やすい順に手を打っていきましょう。

ステップ1:入力項目を削減し、画面を最適化する

最も即効性が高いのが、入力項目の削減と画面の最適化です。「項目を作りすぎて業務負荷が上がっている」という状態は多くの組織で見られる典型的な失敗パターンであり、ここを改善するだけで体感が大きく変わります。

業務に本当に必要な項目だけに絞り込み、入力の見返り(ダッシュボードで成果が見える、自動化で手離れできるなど)を先に提示することが、定着への近道です。

ステップ2:継続的なトレーニングと現場推進者を置く

「PDFを渡して終わり」のトレーニングでは定着しません。シナリオ型のトレーニングや定期的な勉強会、部門ごとのマニュアル整備など、継続的な学習の仕組みが必要です。

加えて、現場にSalesforceの推進者(エバンジェリスト)を配置し、トップ層が率先して利用する姿勢を見せることが効果的です。「上司が使っていないのに、なぜ自分が入力しなければならないのか」という心理的障壁は、制度や説明だけでは解消しにくいものです。

ステップ3:権限設計とガバナンスを整備する

権限の乱立は放置するほど整理が難しくなります。最小限のプロファイルに権限セットを組み合わせる方針を定め、定期的な棚卸しと変更理由の記録を運用ルールとして組み込みましょう

自動化やカスタマイズについても、命名規約、台帳化、影響分析の手順を整備しておくことで、技術的負債の蓄積を抑えられます。短期的には「対応が遅く見える」と感じられるかもしれませんが、長期の運用コスト削減に大きく貢献する投資です。

ステップ4:分析基盤を段階的に整える

標準レポートの限界に直面したとき、選択肢は大きく4つに分かれます。

選択肢 期待効果 主なコスト・注意点
標準レポートの徹底(KPIを絞る) 速い・安い・現場の導線に乗りやすい 複合分析や外部データ統合には限界がある
CRM Analytics併用 Salesforce内外データの分析、業務フロー内で使える ライセンスと設計が必要、データモデリング力が求められる
外部BI+DWH(Power BI、Tableauなど) 自由度が高く、全社指標の統一に向く 連携制約やデータ取り出し設計が重い
データ分析代行(外注) 立ち上げが速く、社内の人材不足を即座に補える 内製化しないと依存が続く(知識移転が鍵)

社内にKPI定義や分析実装の担い手がいない場合、BIツールの導入と並行して「データ分析代行」を活用するアプローチが現実的です。外部の専門家にダッシュボード構築やデータパイプラインの設計を委託し、「入力したデータが経営判断に使える」という成功体験を短期間で作ることで、現場の入力モチベーションを引き上げられます。

特に、外部BIとの連携ではAPIの2,000行制限などの制約が前提になるため、ETL(データの抽出・変換・格納)やDWH(データウェアハウス)の設計を含めた支援を受けることで、「外に出せば万能」という誤解を避けた堅実な基盤を構築できるでしょう。成果の出るパターンが固まった段階で段階的に内製化していく戦略が、費用対効果の面でも優れています

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まとめ

Salesforceが「使いにくい」と感じられる背景には、マルチテナント設計に由来する制約、項目過多や権限乱立といった運用設計の不備、そしてトレーニング不足による定着失敗という3つの要因が複雑に絡み合っています。しかし、多くの不満は「製品の欠陥」ではなく「高機能・高自由度の裏返し」として説明でき、運用設計を正しく整えることで大幅に改善が可能です。

まずは入力項目の削減と「入力の見返り」の設計から始め、継続的なトレーニング体制、権限・ガバナンスの整備、そして分析基盤の段階的な構築へと進めていきましょう。データ活用に課題があるなら、BIツールの導入やデータ分析代行の活用も積極的に検討してみてください。

Salesforceの「高機能・柔軟性・統合性」という強みを武器に変えるカギは、「全部使おう」ではなく「必要なものを絞り、正しく設計し、継続的に改善する」という運用の姿勢にあります。使いにくさを感じている今こそ、運用を見直す絶好のタイミングです。

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